ROAD TO “RAISE YOUR VOICE”

ダベルが東京からオースティンに旅をする理由

takahito iguchi
8 min readMar 7, 2020

サウスバイサウスウエスト2020開催予定のオースティンに向けて羽田から金浦を経て、仁川へと至った、深夜の空港内カフェのテーブルでこのエッセイを書いています。

サウスバイの開催はかなり危ぶまれていますし、残念ながらシリコンバレーの主要プレイヤー達は軒並みそこから(足並みを揃え)降りようとしています。

そもそもここに至るアシアナの羽田金浦間の便にしても、乗客は4分の1程度で、仁川空港も人影はまばら…。先ほどアメリカの入国制限が更に厳しくなりましたし、昨日はカリフォルニア州とロサンゼルス郡が緊急事態宣言を出しました。

明日昼発のアシアナ航空仁川発ロサンゼルス行き便がそもそも飛ぶのか?あるいは飛んだとしても無事米国に入国できるのか?はたまた隔離されず、そのままサンフランシスコの自宅まで無事戻れるのか?皆目判りません。

そして、そこからオースティンへの出立が可能なのか?サウスバイは本当にやるのか?余りにもトラップが多い上、自分のコントロールできる範囲を超えた世界規模の脅威を前に立ち竦みたくなる….…かと思いきや、その事態に挑戦したい気分がむくむく湧いて来る自分がここに居ます。

これだけ危機的な状況の中でこそ考えられること。試せること。語り合えること。共に何かを為すために力を出し合えるシチュエーションが無数にイメージすることが出来て、ついワクワクしてしまっている自分がここに居ます。

サウスバイに向かう理由はそもそも何なのか?

それがそもそもこの旅の有する大きな課題であって、旅することでしか為せないことがあるからこそ、例えどんな難しい事態であってもそれを楽しめる意欲が自然に沸いて来ます。

今自分たちのチームが開発している「ダベル」というアプリケーションは声のミートアップのためのアプリであり、世界各地のブラインドの方々が距離や国境、立場とか肌の色とか様々なボーダーを超え「声で通じ合い、語り合い、共に助け合う」新しいグローバルなソサエティを形成しています。

最初は声のソーシャルアプリとして、ライブに楽しめるソーシャルラジオとして開発をしたものが突然それを発見し、て熱烈に使い始めてくださった世界中のブラインドの皆さんの幾多のフィードバックを元に、声を通じて誰しもがいつでもどこでもソーシャライズすることのできる声のミートアップアプリへと大きく変貌を遂げていました。

それは製品公開から、既に半年ほど経った後の出来事でした。

今オースティンに向かい旅しようとしているのは、まさにそのアプリケーションと、その世にも稀なソサエティを世界に届ける為なのです。

ロス経由サンフランシスコ経由でオースティンに向かおうとしているのも、その旅の過程でより多くのブラインドの皆さんと語り合おうと思ったからに他ありません。今も尚おぼつかない英語で会いたい方々にせっせとメールを打っています。

と言いながらも、この緊迫した異常事態の最中、アポイントもなく訪れることには我ながら「大丈夫か?」と呟かざるを得ない気分でもあるのですが、3月19日オースティンで予定されているオースティンのブラインドの方々をサポートする為のファンドレイスイベントはもう期日が決まっており、地元の日本人コミュニティの皆様との連携を通じ準備怠りない中、そこを目指し移動する行動そのものが、もはやファンドレイズイベントの一部のような気さえしているのです…。

そこでは、あのピーランダーのイエローさんのライブ・ドローイングや、ナショナルフェデレーションオブブラインド全米プレジデントのスピーチ(現在調整中)など、多くの意味ある催しを行う予定であり、

それこそ3.11(東北大震災)の際のSXSWコミュニティからの考えられないほど力強い、素晴らしい支援の数々への感謝を表明する意味でも、是非とも素晴らしい場をご提供したいと考えています。

そして、そのイベントの名は「RAISE YOUR VOICE(声をあげよう!)」です。

声を通じ、誰しもが、いつでもどこでも、界の誰かと心と心を通わす生声の交流ができること。

それが、そもそものダベルの開発意図でした。

かつて自分がセカイカメラとテレパシーのCEOを退任せざるを得ない中、そのどうしようもない孤独の中で思いついたのが最初期の着想でしたが、それがやがて全米のブラインドの皆さんに届き、しかも日々40–50分に及ぶ考えられないようなエンゲージメントを獲得するまで育つことになるには、それこそ(着想時の2014年時点から数えると)5年以上の年月が経っていました。

2011年3月11日に初めてサウスバイに参画し、そこで震災を支援する大きな動きを生で体験(自分たちもHELP SAVE JAPANという運動を起こしましたが、SXSWオフィスの動きはより迅速で大規模でした)しました。

その一方、震災時のITツールとしては、スカイプやツイッター、フェイスブックなどに比べてセカイカメラは大いに遅れを取ってしまって(セカイカメラは津波の記憶を保存するプロジェクトでヤフー!さんと連携させてもらいましたが、震災そのものへの対処では実に不甲斐ない存在でした)その痛恨への反省も、このダベルの製品開発には込められていました。

そして、それを改めてオースティンに持ち込めること。

そして、それがオースティンのブラインドの皆さんへの支援に役立てそうであること。

様々な縦糸横糸が重なり合って、今ここに居られることに心から感謝しつつも、もちろん、まだまだ旅は始まったばかりです。今、仁川空港は静かに寝静まっています。さて、飛行機は飛ぶのか?

そして、そもそも米国入国すら怪しい現在ですが、何がどう転んでもこの志と、このアプリを通じ、偶然得られた世界中のブラインドの皆さんとの貴重なご縁は必ず無駄にしない。どころか、相互の疑心暗鬼や相互不信が下手をすると長期間に渡る人類同士の不和や亀裂をもたらしかねない…。この新型ウイルス脅威の最中だからこそ、言語や民族や文化の境界を超えて人と人とが気軽に、快適安全安心に、楽しく語り合えるダベルを届けるべきであると強く願っています。

(ダベルは先日、南アフリカのブラインドコンソーシアムとアフリカ大陸における普及活動のコンセンサスを締結しました。)

(「なぜ、我々はサウスバイ会場の外でファンドレイズイベントをやるのか?」の記事がオースティンスタートアップスのメディアにも掲載されました。)

アプリはまだiOSバージョンのみですし、英語によるコミュニケーションが主体ですが、誰でも気軽に参加できる声のコミュニティが即作れます。

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Written by takahito iguchi

Tonchidot & Telepathy & DOKI DOKI!!

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