オースティンと日本人 そして、SXSW 2019 に向けて。

takahito iguchi
10 min readJun 24, 2018

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SXSW 2018 を無事終えてサンフランシスコに戻ってきました。2011年3月に初めてオースティンの地を踏んでから、もう7年が経ちます。

皆さんがお気付きのようにSXSW に参画する日本人の数は飛躍的に増えました。それだけでなくパナソニック、ソニー、デロイトトーマツ、電通、博報堂、東京大学など日本企業や教育機関も現地で徐々にそのプレゼンズを発揮し始めていて、SXSW カルチャーの一翼を担うコミュニティを着実に醸造しつつあります。

本来 SXSW のような祝祭的空間で、自由闊達、根源的創造性の問われる、積極果敢のパフォーマンスを行うことは(元来謙虚さをモットーとする)日本人及び日本企業にとって苦手とする所だったと言えます。

ところがトレードショーブースや各社の「ハウス」でのパフォーマンスを見る限り、そのような前提条件を大きく裏切るかのようにイノベーティブな展示やプレゼンテーションが日々行われていました。

さて、それはなぜでしょう?いきなり国民性や企業文化が変われる訳ではありませんから、そこには何か大きな変化のキッカケが有る筈です。

僕は、それについて一つの仮説を抱いています。

それはSXSW INTERACTIVE 開始日付が大きく関わっているのではないか?と思っています。そう、それは東北大震災の発生した日なのです。僕自身 2011年3月11日未明のオースティン空港に降り立った時、当時の CFO から電話連絡をもらいました。

「東京が燃えています」

レッドアイで降り立った未明のオースティンで目の当たりにしたのは震災で炎上する東京を映し出したCNNの生々しい映像だったのでした。

「東京が燃えている」この恐るべき事実を直ぐ受け止めることは正直難しかったのです。しかも、国内にいる家族や友人、会社の仲間達の安否も知れない。どころか、そもそも日本がどうなるのか?すら全く判らない…。

とにかくこの事態に何とか対処するべきと考えて、SXSW 2011参加のためオースティンに来たばかりの仲の良い起業家達で市内ホテルロビーに集結して善後策を話し合いました。で、そこで出た結論はここオースティンで最大できることを頑張って、オースティンから日本に向けての貢献をしよう!ということでした。

そこでそのキャンペーンの命名を考え、ロゴマークやノベルティグッズを検討し、募金ブースの立ち上げを急遽進めました。そして、仲間達や事務局、協力者支援者達の懸命の努力が実り、オースティン・コンベンションセンター二階のエントランスに(素晴らしい立地!)素晴らしいブースを持たせてもらい、早速募金活動を開始しました。

そのキャンペーン名は「Help Save Japan」。

お金だけでなく、”元気”をSXSWから日本に送って苦しい震災を乗り越えるパワーを世界中からいただこう!と、いうコンセプトでひたすら声掛けと、記念撮影(笑顔を撮影して共有することをこのキャンペーンのエンゲージメントとしました)を行い、ノベルティの Help Save Japan Tシャツをバンバン配布しました。

ユビキタスエンターテインメントの清水亮さん率いるチームのみなさんが細かい手配や現場運営などを引き受けてくれ、そのブースは驚くほど稼働し、驚くほど多くの支援を獲得できました。

でも、本当にすごいことが起こったのはまさにその瞬間からでした。

それこそ誰が言うでもなく、その場で震災に呼応した、日本の震災復興を支援キャンペーンやパネルセッションが次々立ち上がったのでした。その一つに僕も参加したのですが、それは著名ブロガー達がこういう場合何ができるのか?語り合う有意義なディスカッションの場でした。そこで理解できたことは未だに強く印象に残っています(下はその一例です)。

つまり、「テクノロジーは人間のためにある。人間が幸福を追求するために使いこなされる」ということを僕自身初めて訪れたオースティンで痛感したのでした。

それは驚きの光景でした。彼らはテクノロジーのあるべき姿を自ら体現していると思いました。これこそが SXSWのカルチャーであり、スピリットであると強く印象付けられました。そして、それはインタラクティブ以外のパフォーマンスでも広がっていきました(SXSWは、本来音楽フェスティバルを起源としています)。

そこからです。僕自身、毎年SXSWに参画すること、そしてそこからのフィードバックを通じて、様々なノウハウを日本の起業家達に伝播して、いずれ、やがて1500名の日本人がSXSWに来るための支援を行おう!と決意しました。そして国内でのSXSW啓蒙イベント開催やワークショップ、ピッチコンテストなどの開催を根気強く続けました。

すると、5年目にその目標は達成し、今や単年度でもその参加人数を超えるレベルにまで到達しました。もちろん僕自身の貢献は微々たるものです。

多くのイノベーター達やその支援者やメディアの皆さん、大学関係者の方々など、コツコツ頑張って地道に底上げしたからこそ、の成果なのです( 例えば TODAI to SXSW の動きは目を見張るものでした)それでも当時こんなに成長を遂げるとは思っていなかったので本当に嬉しい限りです。

ですから我々日本人が3.11のオースティンで戦うことは SXSWer の皆さんと、オースティンの皆さんへのご恩返しだと思っています。

ここに毎年3月やって来てますます元気にテクノロジーとイノベーションの積極的応用のコンセプトやプラクティスを届ける。世のため人のため進化を推し進めること。その顕著な表現を、ここオースティンで毎年展開すること。

それらは我々の心からの「ありがとう!」の現れだと思っています。

ですからより果敢に、前向きに、楽しく、SXSW期間中のパフォーマンスを行うことに躊躇や戸惑いはないのです。

もちろん今年のサウスバイに来た日本人がここで述べたようなストーリーを同じように共有しているとは限りません(それぞれが異なる視点でSXSWを見ている.. というべきです)ですが3.11の瞬間オースティンにいることに対して、何らか熱い思いをお持ちの方は、きっととても多いだろうと思います。

これが2018年のサウスバイから戻ってきて、改めて感じる自分自身の想いです。そして、この物語には終わりはありません。

テクノロジーをより人道的に役立たせ人の幸福に貢献することには終わりはないのです。

そして、日本人がここで頑張ることで、少しでもSXSW及びオースティン、ひいては世界人類に貢献できることを、ますます前進させるため、先ずは2019年のSXSWに向けて僕達自身たちのプロダクトをより進化させ、また再びオースティンに持ち込むことに日々勤しみます。

そして、また、皆さんと、SXSW 2019 現地で笑顔で再会し、語り合い、飲み交わしたいと思います。シーユーアゲインスーン!

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Written by takahito iguchi

Tonchidot & Telepathy & DOKI DOKI!!

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