仮想現実と拡張現実の大いなる蹉跌
新デバイスの普及を前提した世界創造ビジネスの限界
VRもARもMRも、もしかするとアップルが正解を出さない限り普及しないのか?2010年代を振り返ってAmazon Echo以外で新しいデバイスの普及を招いたのは、アップルだけなのではないか?の思いを禁じ得ない。
実際AirPodsとAppleWatchを市中で見かけることは、もはや当たり前の事になってきたし、実際日々使っていてその便利さと快適さは群を抜いていると思う。
アップルグラスを待つ人たち
以前から噂されているアップル製の拡張現実グラスも相当堅実に仕上げてくるだろうし、それはデザインや性能機能だけでなく当然UIが極めて優れたものになるだろう。
しかも、アップルの場合は特にその初期製品を受け入れてベータテスティングを大いに助けれくれるようなアーリーアダプターだけでも(スタートアップの水準で言うなら)マジョリティとも言える人口がいるのだから。
ウェアラブルの夢は去った
ウェアラブルでスタートアップの多くが消え去ったように、現状VRスタートアップの置かれている窮状は相当にシリアスだ。
iPhoneのような市場を想定してあらゆる領域で盛り上がったアーリーステージの数多くのスタートアップと、それらへの投資をしたファンドにとって現状は悪夢という他ない。つまり、iPhoneとAppStoreになると思われたデバイス群は、現実にはそのマーケットを現実化できてはいない。
不便なデバイスをウェアしてまで楽しむべきサービスもコンテンツもまだ現出していない。
AppStoreはiPhoneとiOSの隆盛ありきだし、数かぎりないアプリメーカーはそのアプリケーション市場の隆盛ありきだ。
であればこそ、VR市場の立ち上がりを期待したことへの(当然の)反動はそのままそれらVRスタートアップへの失望に直結する。
であれば、それらのスタートアップの取るべきアプローチは何か?
それは恐らく、ある種のメタ認知を活用することによる「VRデバイスとVRアプリ市場」の土台を前提にはしない、仮想空間をどう付加価値化するのか?のシナリオ作りに他ならないだろう。
デジタルに現実世界を複製するというアイデアの有効性は、特にAR市場トレンドとして明確になっているのだから、その「複製世界創造の文脈でVRサービスのエコシステムを再定義する」ことが欠かせない。
そういった視点の変更を行わない限りそれらのスタートアップはVRデバイスの普及と浸透を待つという、持久戦の領域に踏みこまざるをえない。
そして、そのような長期戦は、決してスタートアップの得意とするところではない。むしろ、その世界観をよりズームアウトして、クラウドAIやARなども含めた俯瞰的視点で改めてビジネス領域を自在に切り替えていくことが欠かせないだろう。躓きは決してマイナス要因だけではない、むしろ、大きな飛躍の機会でもあるのだ。デバイスの普及が目算とズレたとしても、それはそれとして仮想空間の価値を生かすマーケットを発見する機会と考えることが出来る。