声のソーシャルネットワークとは何なのか?AirPods Pro時代の新しい人と人の繋がりを考える。その1

「人は孤独である。誰かと直接お話しできれば、それが大いに解消され得る。なので、知らない人同士が安全・快適に、直ぐお話出来るサービスは世界中の多くの人達から支持される筈だ。」…

takahito iguchi
8 min readFeb 10, 2020
孤独に悩んでいる時「とにかく誰かと何かを喋りたい!」と感じたのがダベルの開発動機です。

私が2019年1月から手がけているアプリケーション「ダベル(Dabel)」を通じ実現しようとしている製品価値は簡潔に言うと上記の通りです。

孤独で何が悪い?孤独にも価値があるだろう!そもそも孤独って解消できるの?……そうです、「孤独」は決して絶対悪などではありません。孤独と向き合うことが大事な時や欠かせない時間である場合も確かに存在します。

ただ一方、必要以上に孤独感や孤立感に囚われて人生が嫌になってしまったり、せっかくある素晴らしい才能や能力や機会を活かす事が出来ない。そう言うことはなるべく避けたいものです。

私自身、2014年6月テレパシー社のCEOをクビになってしまい、サンフランシスコの自宅アパートで一人孤独と孤立に悩み続けた「暗闇」の時間の経験と痛みがあります。その時には「ここから決して抜け出せない。自分は無価値な人間だ」と言う否定的悲観的な気持ちがなかなか抜けずに苦悶し続けていました。

その時心の底から思った事が「とにかく誰かと何でも良いからおしゃべりしたい!」という強い衝動だったのでした。

誰にも孤独を伝えられないのが何より辛かった当時の自分は、とにかく誰かと話せる事に一縷の希望を見出していました。

誰でも良いから何かを喋りたい!そういう欲求がどのくらいあるのか?未知数でした。

もしいつでもどこでも、誰かと何かを話し合えるとしたら、世界はどうなるだろうか?それが最初の思いつきでした。

今から考えると、その初期衝動の時点からアプリの完成と提供まで、なぜこんなに時間がかかったのか?非常に不思議です。ただ、その2014年時点で、自分自身の中に、それをなんとかして実現したいという熱情が確かに存在していました。

ふとしたことで、なんでも喋れる相手が必ずそこに居てくれること。それが何より実現したいことでした。特に不安に囚われ他人に悩みを話せないような人にこそ、そういう体験をしたい。つまり製品として世の中に届けたいという強い想いがありました。何より自分がそれを欲していました。

ただ、いつでもどこでも世界中誰とでもいきなりおしゃべりを始められる体験が果たして現実に可能なのか?そもそもそれが本当に人から求められているのか?その当時はあまり確証を持てませんでした。正直自分自身の中に余り自信がなかったのです。

そのため声の出会い系「baby(2016 リリース)」や声のTwitterとも言える「ball(2017 リリース)」など、数多くの試行錯誤を繰り返しようやく辿り着けたのが、この「dabel(2019 リリース)」なのです。

ベイビーやボールなどの先行アプリを通じ、声のコミュニケーション探求は深まりました。

今となっては現状 ダベルが提供している製品価値には確固たる自信と自負があります。また、実際に使っているユーザーの皆さんのデプス・インタビューやアンケートなど実際の利用データを確認する限り、今はしっかりと製品価値をお届け出来ていると言う確証が得られています。

そう、最初は自分だけの思いつきに過ぎなかったし、それが本当に必要とされているのか?が、全く未知数でした。

もしかすると世界中誰も欲していないかも知れないと思っていたアイデアが、現実に製品として実現するだけでなく、それを熱狂的に使ってくれるユーザーが現実に現れ利用が常態化すること。それがこの一年の間に一気に起こりました。

自分が自身の孤独の中でその届けるべき体験価値(誰かと何かをいきなり話せる体験を現実化したい!)を発見して、恐る恐る製品化し続けて(三つのアプリを4年間に立て続けにリリースするのは、スモール・スタートアップにとっては決死の覚悟でした)、今まで全くユーザー基盤を構築できなかったにも関わらず、ダベルだけは大きく異なりました。

それは視覚障害のある方々がダベルを発見してくださって、その上でアプリを口コミ経由で大勢に伝えてくださり、その上毎日まるでライフラインのように継続的に使ってくださってようやく可能になった出来事でした。

盲目または弱視の皆さんがダベルを発見してくださった事が大きな転機でした。

もちろんその道筋は全くストレートで平坦なものでは有りませんでした。最初ソーシャルラジオ(ライブストリームのできる個人向け音声配信サービス)としてスタートしたダベルはユーザー獲得が伸び悩んでいる最中、思い切って複数ユーザー同士による共同配信が可能な機能を試験的に実装しました(通称 co-streaming 機能です)。

それが思いの外楽しく、新しい体験価値を実現しているなと感じたので、その共同配信機能をプッシュする形でしばらくサービス提供していたのですが、それでもなかなかユーザー数は伸びず、僕とマーケターのベントンがコツコツ毎日手作り配信している番組しか無いようなキツい状況がずっと続いていました。

そしてダベルがユーザーに発見される瞬間がやって来た。

それが一気に変わったのが昨年の5月、新幹線で東京から京都の自宅に戻る途上、新幹線車内でいきなりユーザーの方からストリーム内での会話に誘われたのでした。そして、それは目も覚めるような素晴らしい体験でした。

全く見ず知らず、母国語も国籍も肌の色も出自も何もかも違う同士でいきなり楽しく語り合える体験が本当に自分自身でも体験できたのです。

そして何より嬉しかったのは、そのユーザーの皆さんが本当にダベルの事を気に入ってくれていて、その体験を心から楽しんでくださっていたことでした。

「タカ、このアプリ最高!大好き!これを作ってくれて、本当にありがとう!」そんな手放しの賛辞を直接ユーザーの方から聴けるなど全く想像もしていなかったので、本当に驚きましたし、心から嬉しかったです。

これがユーザーの皆さんによってダベルが発見された瞬間です。

その当時はそもそも視覚障害の皆さんのことは全く知りませんでしたし、そういう方々がどうやってアプリを操作できるのか?全く想像したことすら有りませんでした。

そもそもダベルは視覚障害者や盲人の方々に向けて開発した製品ではなかったので、晴天の霹靂というか、ただただその利用の成長に驚くばかりで当初はどう対処するべきなのか?よく分かりませんでした。

ですので、チームとして、

1)とにかく自分たちの配信数を増やしてユーザーとの語り合いの機会を増やす。

2)ダベルでのオフィシャルなストリーミング・イベント(オンラインのミートアップですね)を毎週行って定期的に語り合う。

3)配信イベントだけでなくユーザーのストリーミングにもなるべく参加して耳を澄ます。

これらのことに集中的にフォーカスしながら、とにかく気に入って毎日使ってくださる視覚障害者の皆さんに対応したユーザーインターフェイスや体験性の改善に取り組み続けました。そこからダベルは大きく飛躍できるチャンスを掴んだのでした…。

ヒアラブル環境、特にポッドキャスト市場は2019年大きくブレイクしました。そして次は?…

--

--

takahito iguchi
takahito iguchi

Written by takahito iguchi

Tonchidot & Telepathy & DOKI DOKI!!

No responses yet